夏日となった12日の夕刻、北庭園に面する本堂裏手の縁側に座り香炉の灰をならしていたところ、墓地寄りの庭石の一つに1羽のキセキレイさんが止まりました。実に長い時間、長い尾でお得意の「庭石たたき」にいそしみながら鳴き続けていたので、撮影用のスマートフォンを手に縁側を歩き近づいていくと、途中、別の庭石の陰からガサゴソと落ち葉を踏む足音が聞こえてきました。
コンにちは、お久しぶりです。青葉と庭石の間にひょっこり顔を出したのは、見覚えのある「2度目まして」のキツネさん。初めましての昨年12月には記念写真を撮らせてもらえませんでしたが、今回はおあつらえのタイミングに登場してくれました。ご尊顔だけとはいえ、ばっちりカメラ目線をいただきました。前回私が発見したときは、巣立ちから1~2か月位経ったころだったでしょうか。そのまま長林寺サンクチュアリ内で越冬したようです。すっかり夏毛に生え変わった体は、さらにひどくやせ細っていました。しかもかわいそうに、後ろ足に大きな傷を負っているらしく、以前と違い私に気づいてもすぐに逃げ出すことができません。後ろ足を引きずるようにして動き始めると、懸命に力をふりしぼってよろよろと駆け去っていきました。骨折しているのかもしれません。
念のため救護について、栃木県南環境森林事務所の環境企画課へ問い合わせてみました。ご回答は、「人為的な要因によってけがをしている場合に限り、野生のキツネは救護対象になります」。私はシャーロック・ホームズではないので、負傷時の現場に居合わせない限り、けがの原因が交通事故によるものかイノシシなどの襲撃によるものか特定できる推理力は持ち合わせていませんが、まったくの対象外ではないそうなので安心しました。ちなみにカルガモさんはイノシシやハクビシン同様、害をもたらす種として救護の対象外にリストアップされています。足利市の鳥、無念。
対応してくださった職員の方によれば、意外にもこれまでに野生のキツネさんの救護例は無く、「そもそもキツネがいるという報告自体極めて珍しい」とのお話でした。「当サンクチュアリにはテン(貂)もいます」と教えたら、受話器の向こうでいよいよ目がテンになられたでしょうか。〈副住 文央〉