花祭り


在来種のシロバナタンポポ
花びらが無く雄しべが白い
ヒトリシズカ
愛犬も歩けば当たる
ツクシンボウ

三寒四温の春彼岸が過ぎ、山内に百花万葉の色めく4月となりました。新年度は雨上がりの朝から。門出のときを察したのか、六地蔵尊の背後に5枚だけ残っていたハクモクレンの淡黄色の花びらが、1日の夕方までにすべて旅立ちました。1週間以上経った今も、かすかに甘い余香が漂っています。ふくよかに咲きそろっていた淡紅色の桜の花は、3日の日曜日が艶のたけなわ。同日午後と4日に降りしきった雨でまばらな姿に変わり、落花が地上のあちこちに絨毯(じゅうたん)をつくりました。5日以後は日増しに春の陽気へ。権現池では桜の花筏(はないかだ)をバスフラワー代わりに、カルガモさんや亀さんが遊泳しています。青空の中の爛々たる桜、朝もやの中の朧々たる桜、花曇りの中の寂々たる桜、遠山の中の楚々たる桜、夕陽の中の哀婉なる桜、闇夜の中の妖美なる桜・・・。満開か散り際か、淡紅か白か、一重か八重か。皆さんはどの桜がお好みでしょうか。


伽藍越しに見る道了堂とシダレヤナギ

ユキヤナギとベニコブシ

オオシマザクラや梅に似たスモモの花も綺麗な黄白色を連ねています。ユキヤナギとベニコブシの柳白花紅も優美な趣。「満天星」の異名をもつドウダンツツジの白い小花もちらつき始めました。残念ながら屋内の頭上脚下で咲き匂うのは、風流とかけ離れた暗褐色のクサギカメムシさんたち。その数たるや例年にない多さです。そばに寄って来た猫さんが思わず顔をしかめて合掌するほど。「へっぴり虫」の異名は伊達じゃありません。タンポポ、シナミズキ、スイセン、ヘビイチゴの黄。ノジスミレ、ムスカリ、ハナニラ、ツルニチニチソウの紫。オオイヌノフグリの明るい青紫にヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)とムラサキカタバミの明るい赤紫、ヒメオドリコソウの渋い赤紫。数知れない緑の中では、シダレヤナギの葉色がひときわみずみずしく、雨上がりともなればいっそうあざやかに照り映えて目に飛び込んできます。そんな新緑の樹下を憩いのテラスとして、菊地さんの寺カフェが6日にめでたく再開されました。少人数でゆったり楽しむプチお花見が定着しつつあるコロナ下3回目の春、来月に道了尊の大祭を控えて第7波の兆候が気になるところです。

けだしこの子は、(執着の対象となるべき)王位を捨て、(感官の対象や)領土(拡大)については顧るところなく、激しい努力によって真理を窮め、人の世における迷妄の闇を払わんため、知よりなる太陽となって燃え上がり、光り輝くでありましょう。
原実 訳『大乗仏典13 ブッダ・チャリタ(仏陀の生涯)』「第一章 王子ご降誕」(中公文庫)より

昨8日は、お釈迦様のご誕生をお祝いする花祭りの日でした。「降誕会(ごうたんえ)」・「仏生会(ぶっしょうえ)」・「灌仏会(かんぶつえ)」・「浴仏会(よくぶつえ)」などとも称されます。今年も花御堂(はなみどう)の中に安置された誕生仏像に甘茶を注いでお参りしました。〈副住 文央〉