テンと地と


 

昨年末のキツネさんに続き、このたび長林寺サンクチュアリで新たに野生動物のテン(貂)さんの生息が確認されました。上の画像は、撮影動画から切り出して少し画質を補正したものです。
24日午後に発見後、3分間ほど至近距離で観察されました。

キツネさんの亜種名がホンドギツネだったように、テンさんの亜種名もホンドテン。同じく周辺で目撃情報が寄せられていたイタチの仲間に属する哺乳類ですが、イタチよりひと回り大型とされ、毛色があざやかです。胴長の体にふっさり生えた冬毛は明るい黄褐色、黒目がちのあどけない小顔と長い尾の先はきれいな白色。ときどき光の加減でレモン色に輝く毛並みには土臭さが似合わず、田舎寺の藪山がランウェイでは申し訳ないほどのセレブ感さえあふれていました。ホンドテンの中でも姿色が美しいとされるキテンという種のようです。流れるような動きで、土壁伝いも木登りもお手の物。のり面勾配をすいすい上下に移動しながら、夢中でエサを探していました。調べてみたところ、木の実と果実、虫に小魚、小動物から小鳥にいたるまで、雑多なお食事を召し上がる哺乳類随一の広食性種とのこと。種子の運び屋としては森のVIPでしょうが、土壁に穴を掘り営巣するカワセミさんにとってはまさしくテン敵でしょう。行動圏も見た目も近いキツネさんとはライバル関係でしょうか。今後棲み着くかどうか分かりませんが、生態系のピラミッドではオオタカなどの猛禽類に次ぐ上位種に入ると思われるテンさん。動静に注目していきたいところです。

日本の民間伝承によれば、有名な化けキツネや化けタヌキより化けテンさんは術に勝るとか。とはいえ、強大な軍事力を手中におさめた人間の権謀術数にくらべれば恐ろしく可愛いものでしょう。24日、大国ロシアの軍がウクライナへの侵攻を開始したと報じられました。五輪休戦協定にそむく3度目の欺き。北部のチェルノブイリ原発はいち早く占拠され、戦闘の激化によって生態系の惨事が再来するのではないかと警告されています。春の足音はたしかに近づいていますが、凍てついたままの世界。東西分断の図を写し取ったような下弦の月が浮かぶ夜、破滅的な戦争の道が選ばれないことを祈るばかりです。〈副住 文央〉

18日朝、つかの間の雪化粧