今年の臘八当日の朝は雲塊が空一面を覆ったため、お釈迦様のおさとりと因縁の深い明けの明星を目にすることができませんでした。その代わりに、北東から南西の空にかけて横たわった陰影の濃いうね雲が、まるでアフリカの大地溝帯のように細長く縦に裂け、ゆっくりと流れ動くその裂け目に来光を招き入れたほんのひと時、薄墨色の雲の端にあたたかい虹色の線が浮かび上がりました。時間にして2、3分だったでしょうか。“早起きは彩雲の得 The early bird catches the glorious cloud!?” いつものことながら、カメラを持ち歩いていなかったのが悔やまれます。
写真は、晴れ上がった境内からのぞんだ半月、宵の明星、沈みゆく夕陽。「月(ツキ)、日(ヒ)、星(ホシ)、ホイホイホイ」と夏ごろから林の奥で響いていたサンコウチョウ(三光鳥)の独特の鳴き声が、暮れに近づくにつれて聞こえなくなりました。目のまわりとくちばしが綺麗な青い色をした珍しい鳥です。鳴きまねをするガビチョウは藪などでよく見かけても、本家の麗姿にはまだ一度しかお目にかかったことがありません。ここ数年「カモカモエヴリバディ」状態となっていた権現池のカルガモの密具合も今年は控えめです。17時を過ぎて静まりかえった池を眺めていると、ちょうど山との境目あたりの宙を大きな鳥の影がさっと横切りました。おそらくはオオタカでしょう。タカというと手嶌葵さんの「テルーの唄」が思わず頭の中に流れる私ですが、歌い出しの詞にある「夕闇迫る雲の上」よりずっと下、秋のイベントで遠藤孝一先生がお話しされていた通り、林のへりの宙で池周辺を偵察するように舞い、あっという間にまた林の中ほどへ消えていってしまいました。羽音を立てない飛行術は、当山の看板アイドルでおなじみフクロウのそれを思い起こさせます。オオタカとフクロウの共生する林が、無事に来年も実現できるでしょうか。9日はプチ煤払い。本堂を中心に掃除しました。年末年始の飛翔に向けて、師走の峠はこれからです。〈副住 文央〉